アマゾンのワンクリック特許をはじめ、様々な特許が成立するたびに大きな話題となったビジネスモデル特許。ビジネスモデルそのものでの特許が認められるようになったと誤解される方もおられますが、ビジネスモデルそのものは特許法の保護対象ではありません。特許法が保護対象とする発明は「自然法則を利用した技術的思想の創作」と定義されています(特許法第2条)。発明は、ざっくり言いますと技術的アイデアなのです。
しかし、インターネットが普及した高度なネットワーク社会では、ビジネスモデルを支えるネットワークやコンピュータ等の技術的仕組みの視点から特許を取得することが可能です。これを「ビジネスモデル特許」と呼んでいるわけです。
このビジネスモデル特許、米国でのブームが日本にも飛び火した2000年頃に比べると、最近の出願件数は低いところで推移しているようです。
http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/bijinesu/biz_pat.htm
原因は色々と言われています。特許率が、全分野の平均値(約60%)と比較して、極めて低かったことがあげられています。2003年から2006年の特許率は約8%であったとのこと。発明が技術的アイデアであることが正確に理解されないまま、経営・市場関係者からは、ビジネスモデルそのものでの特許が認められるといった誤解があった結果、そもそも発明としての成立性が低かったと考えられます。
また、当時の知財関係者の間では、「ビジネスモデル」という言葉そのものに拒絶反応が大きく、新しい技術を扱っていながら伝統的に職人気質の強い知財業界で、儲けることや利益を上げることを潔しとしない風潮があったかも知れません。
このようなことから「ビジネスモデル特許」は否定的に扱われ、米国での特許保護対象の見直し論とも連動した結果、新規性・進歩性の基準を引き上げて特許が成立しにくい土壌が形成されていったとの分析もあります(松倉秀実著「黒船特許の正体」)。
ビジネスモデルは特許では守れないと見切りをつけ、ビジネスモデルの創出そのものを自ら放棄してしまった感のある日本の企業。特許率は、出願件数が少なくなったことも影響しているでしょうが、2007年以降は上昇傾向にあり、2011年には暫定値で約37%まで上昇しています。
世界的なビジネスモデルが日本では創出されにくくなってしまったという問題意識と最近の特許率の上昇傾向とは無関係ではなく、新規性・進歩性の基準について、特許率を上昇させる揺り戻しのようなこと(新規性・進歩性の基準の引き下げ)が起きているのでは?という気がします。
ビジネス関連発明の特許率が低調ながらも上昇している昨今、貴社のビジネスを今一度見直されてみてはいかがでしょうか。ビジネスモデル特許として権利保護できるかもしれませんよ!