週刊東洋経済(4/14)に「波乱の切り餅裁判 サトウはなぜ負けた」の記事が掲載されていました。
本題に入る前に、サトウの切り餅事件の経過についてざっくり整理しておきますね。
一般的に、特許権侵害訴訟においては、侵害の成否と抗弁権(対抗できる権利)の有無が争われます。
侵害の成否の観点では、越後製菓の特許請求の範囲には、切り餅において、「載置底面又は平坦上面ではなく」(上下面ではなくの意味)側面の周方向に切り込みを設けることを内容とする記載がされており、サトウの切り餅は上下面に切り込みが設けられているところ、「載置底面又は平坦上面ではなく」の文言は、切り込みを入れる位置が切り餅の側面の周方向であることを強調するようにも、上下面に切り込みを設けた切り餅を除外するようにも、どちらにも解釈し得ますので、越後製菓の権利範囲から上下面に切り込みが設けられた切り餅を除外するかどうかが問われました。
要するに、サトウの切り餅は、越後製菓の権利範囲から上下面に切り込みが設けられた切り餅が除外されれば非侵害で、除外されなければ侵害となります。
先日の知財高裁における中間判決では、主として、本件明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌した本件発明の作用効果の捉え方がポイントになったと思います。本件明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌した結果、切り餅の側面の周方向に切り込みを設けることで「加熱時の突発的な膨化による噴き出しが抑制」されることが本件発明の本質的部分であり、上下面に切り込みを設けないことで「焼いた後の焼き餅の美感を維持できること」は付随的効果にすぎないため、「載置底面又は平坦上面ではなく」(上下面ではなくの意味)の文言は、越後製菓の権利範囲から上下面に切り込みが設けられた切り餅を除外する決め手にならないと判断されたものと考えています。
「波乱の切り餅裁判 サトウはなぜ負けた」に関する記事の続きは、次回記載したいと思います。